国際大問題と教員の地位  八尾 信光(鹿児島支部)

 八尾氏の報告は「国際大問題と教員の地位」と題するもので、資料として、「鹿児島国際大事件のあらまし」が配付され、これに基づいた話であった。

 事件が教官の採用をめぐって発生した経過が話された後で、本事件処分の異常性と不当性として1)教員の学問的判断を理由とした処分。2)規則上の根拠を示さず決定された処分。3)教授会・評議会での審議抜きの懲戒解雇。4)労働基準監督署長の認定なしの懲戒解雇。であり、委員会と教授会の決定を、理事長下に設けられた「調査委員会」なるものによって非難し、解雇するという一方的で不公平な処分であると述べられた。

 また、こうしたことが生じた背景についても触れられた。すなわち、教授会・評議会での「協議」抜きの大学再編と学則改変。学則から「日本国憲法及び教育基本法の精神」削除。各種全学委員会の各部長や館長・所長の諮問機関への格下げ。役職者の選出の事実上の学長指名制への改変。教員の募集と審査の権限の学長下の人事委員会への集中。などなど。

 こうした事実は、大学における私たちの日常的な民主化への努力が大切であることを教えている。三先生に対する長期に渡るであろう支援とともに、こうした点にも引き続き努力していきたいものである。(田島)


法人化後の教育研究の変化  遠藤 雄二(福岡支部)

 科学者会議福岡支部の遠藤氏の報告は「法人化後の教育研究の変化」であり、32ページに渡る分厚い資料をもとに話をされた。資料の内容は1)国立大学の法人化後の作業スケジュール(案) (国立大学懇談会堤出資料)。 2)国立大学法人(仮称)の仕組みの概要(文部科学省)。3)人事制度についての参考事項(国大協国立大学法人化特別委員会)。4)九州大学の中期目標・中期計画である。

 1)では15年の4〜5月に法案の国会審議、16年の4月からの移行を目指していること等が触れられた。2)の仕組みの概要では、学外者を含む数人の副学長から構成され重要事項を議決する役員会制の導入、運営協議会(仮称)などへの学外者の参画、評議会の教学面への限定、学外からの弟三者評価、人事システムの「非公務員型」、などの骨子について触れられた。3)の人事制度では、非公務員型が検討されていること、各大学が就業規則を定めること、過半数労働組合の意見を聞くこと、各大学で給与支給基準を決定すること、その際インセンティブ給与部分を設けること等、議論のポイントの指摘があった。
 資料は未定稿であり、自治や民主に反する部分の改善の主張が必要であろう。(田島)


「非国家公務員型」大学法人になった場合の労働条件はどのようにしてつくられるべきか  橋本 修輔(宮崎支部)

 橋本氏は、今夏、宮崎大学教職員組合情宣部『これでわかった「労働組合」の意義と役割―「非国家公務員型」大学法人になった場合を想定して―』の作成に中心的に関わった経緯と教訓を、大要つぎのようにお話しされた。

 国立大学が「非国家公務員型」大学法人となっても、学生も教育・研究も長期的にはどうあれ、おそらくまったく変わらないだろう。しかし、確実なのは教員の身分が2004年4月1日から一夜にして激変することである。「教官」から「労働者」(労働基準法 第9条 「労働者とは、事業に使用される者で賃金を支払われる者をいう」)に変わる。

 所属する工学部の教員にはインテリは労働者じゃないといった印象や、労働用語の世界への無知がある。さらに、「法人化特別委員会」に文部科学省から提供される参考資料は法人化関係法の立法化以前であるため抜け穴的に「未定稿」と記されてはいるものの、「職員就業規則 項目例」「就業規則作成までの流れ」「就業規則作成に係る基本的な考え方」「「労働者」の範囲について」等々、すべて、法人化後、使用者側にとって有利なような内容の先取りでしかない。そういった事情があるだけに、専攻は電気電子工学科で制御理論をしているのに、この間労働法専攻まがいの勉強をしなければならなくなったわけである。

 国民からも流石大学の教職員の就業規則だと賞賛されるような(少なくとも、現在の労働条件を確保した)そういう規則をつくる必要がある。そのためには組合、JSA等であらかじめ労使協定・労働協約案を作成しておくべきである。また、使用者側との交渉主体となるためには過半数組合でなければならないので、組合員の新加入に努め、組合の拡大・強化を進めている。そうした現在の努力は、たとえ過半数を取れなかった場合でも、過半数代表者として名乗りを上げて、代表者選挙で勝つためにはいずれにせよ不可欠である。(橋本)